My Last Talk
いちばん幸せだった夕方
いちばん幸せだったのは旅行ではなかった。 雨の夕方、あなたが私のタオルで髪を拭いた、あの短い騒ぎだった。 立派な言葉は何もなかった。その平凡さが、あとから幸福という名前になった。誰かに私のことを聞かれたら、功績ではなくその夕方を話してほしい。
家族、愛、友、旅、子どものころのよい記憶
いちばん幸せだったのは旅行ではなかった。 雨の夕方、あなたが私のタオルで髪を拭いた、あの短い騒ぎだった。 立派な言葉は何もなかった。その平凡さが、あとから幸福という名前になった。誰かに私のことを聞かれたら、功績ではなくその夕方を話してほしい。
家族四人で小さい卓を囲んだ頃が、私の下絵だ。 おかずは少なく、話は多かった。話が喧嘩になる日もあった。 広くなってから、その狭さが恋しくなった。肘が触れ合う時間が、本当に豊かな時間だったのかもしれない。
父の自転車の前に乗ると、風で目が開けられなかった。 行き先は覚えていない。残っているのは背中の広さと、ブレーキの前に速度を落とす慎重さだ。 父は優しい言葉が少なかった。あの慎重さが言葉だったと、誰かを乗せてから知った。